Ghostの日本語テーマ事情2026——Casper-ja以降、日本語で使える選択肢は何があるか
Ghost
Ghostで日本語サイトを作り始めると、ほぼ全員が同じ壁にぶつかる。
「テーマが英語圏向けで、日本語を流し込むと文字が痩せて見える」——。
デフォルトのCasperテーマは美しく設計されているが、英字組版を前提にしている。日本語を乗せると行間が詰まりすぎ、和文フォントの指定がなく、句読点の前後が不自然に空く。
僕も最初の1年は違和感を抱えながら運用していた。今日は、Ghostの日本語テーマ事情を2026年時点で整理する。
現状——Ghost Marketplaceに日本語特化テーマはゼロ
結論から書く。
Ghost公式マーケットプレイス(marketplace.ghost.org)には、2026年4月時点で日本語サイト向けに最適化されたテーマは公開されていない。
ここで公開されているテーマは、すべて欧文(英語・ドイツ語・フランス語等)を前提に設計されている。タイポグラフィ・見出しの字間・行送り・コンテンツ幅はすべて欧文のメトリックだ。
これを変える動きはいくつかある。
- 英語圏の人気テーマをフォークして和文対応にした個人ブロガーの公開例(GitHub数十リポジトリ)
- 日本人開発者による小規模な自作テーマの公開例(2016〜2020年が中心)
- 最近は「日本語で読ませる」ことを意識した商用テーマの開発が国内で動き始めている
だが、これらを横串でまとめて紹介する日本語の一次メディアはまだない。だから「Ghost 日本語テーマ」で検索してもたどり着けるのはCasper-ja(後述)の2016年記事くらいで止まる。
Casper-ja(2016)を今入れるとどうなるか
「Ghost 日本語 テーマ」の検索結果の先頭によく出てくるのがCasper-jaだ。
Casper-jaは、Ghost公式のデフォルトテーマCasperを日本人有志が和文対応にフォークしたもの。2016年に公開され、当時はGhost日本語化の唯一の選択肢だった。
2026年4月現在の状況
- リポジトリは現存しているが、Casper本家が6系まで進化しているのに対し、Casper-jaは初期のCasper 1.x系がベースのまま
- Ghost 5/6系で動作させるとテーマのバリデーションエラーが複数発生する(gscan結果で最低でも警告10件以上、エラー数件)
- Members機能・Lexicalエディタ関連のカード対応が不完全
結論として、今からGhostを始める人にCasper-jaはおすすめできない。当時の貢献には敬意を持ちたいが、Ghost本体が大きく進化しているため、そのまま導入するとメンバーシップやニュースレター機能の一部が正しく表示されない。
海外テーマを日本語で使う時の典型的な崩れ方
英語圏のテーマをそのまま日本語で使うと、具体的にどこが崩れるのか。よく見る3パターンを挙げる。
① 行間・文字詰めが欧文メトリック
欧文は line-height: 1.5 前後で綺麗に読める。だが日本語は漢字・ひらがな・カタカナが混在し、文字の密度が欧文より高い。line-height: 1.5 では行間が詰まりすぎて、スマホで読むとぎゅうぎゅうに見える。日本語記事では line-height: 1.8〜2.0 あたりが読みやすい。
② フォントがフォールバックで游ゴシックになっていない
海外テーマのfont-family指定は 'Georgia', 'Helvetica Neue', sans-serif といった欧文フォントの羅列だ。日本語はブラウザのシステムフォントにフォールバックする。結果、macOSでは游ゴシック・ヒラギノ、Windowsでは游ゴシック・Meiryoとデバイス依存でバラつく。ウェブフォントで揃える選択もあるが、サイト全体の読み込み速度に影響する。
③ 句読点の前後の空きが不自然
欧文では単語間にスペースがある。日本語では句読点(、。)の後にスペースがない。これを欧文組版のCSSに流すと、約物の半角処理が行われず、視覚的に不自然な空間ができる。font-feature-settings: "palt" や約物半角用のCSSで改善できる。
これらは海外テーマの責任ではない。日本語を前提に設計されていないため、日本語で運用するなら使う側がCSSで補正する必要がある。
「日本語で読ませるテーマ」に必要な6条件
自分で改造する場合にも、他人のテーマを評価する場合にも、軸になる6条件を置く。
1. フォント指定に和文フォントが含まれる
font-family に "Noto Sans JP" "Zen Kaku Gothic Antique" "游ゴシック" "Hiragino Sans" などが指定されている。ウェブフォント読み込みとシステムフォントフォールバックの両方を意識しているか。
2. 行間が1.7〜2.0の範囲にある
本文の line-height が日本語向けの数値になっている。欧文デフォルトの1.5はスマホで窮屈に見える。
3. 約物処理のCSSが入っている
font-feature-settings: "palt" または専用のCSSプロパティで、句読点・括弧の前後の空きが調整されている。
4. 禁則処理が有効
word-break: normal と line-break: strict の組み合わせで、行頭・行末に来てはいけない文字(句読点や閉じ括弧)が正しく処理されている。
5. 見出しのウェイトとサイズが日本語に合う
英語の太字はそのまま読めるが、日本語のBold700以上は潰れて読みづらい。font-weight: 600 程度で止めているテーマは日本語に気を配っている印である。
6. コードブロックの等幅フォントに日本語フォールバックがある
コードブロック内で日本語コメントを書くケースがある。font-family に "SF Mono", Menlo, Consolas, "Noto Sans Mono CJK JP" のように日本語の等幅フォールバックを入れているか。
この6条件を満たすテーマは、現時点で公式マーケットプレイスにほぼ見当たらない。1〜2条件満たすものはあるが、全部揃っているものは稀だ。
自作・改造という選択——最小で何を触れば読みやすくなるか
「全部揃ったテーマがない」なら、既存テーマを触るという選択になる。
Ghost Proの場合、管理画面の Code Injection(Settings → Code injection) からCSSを直接差し込める。テーマファイル自体を編集せずに、上書きCSSで和文を調整できる仕組みだ。
最小構成の和文調整CSSは以下のような内容になる(サンプル・本記事末尾のC-02で詳しく扱う)。
body {
font-family: "Zen Kaku Gothic Antique", "Hiragino Sans", "Yu Gothic", sans-serif;
line-height: 1.85;
font-feature-settings: "palt";
}
h1, h2, h3 { font-weight: 600; }
この5行を入れるだけで、日本語の見え方が大きく変わる。もっと細かい調整——行長・句読点の詰め・コードブロック・モバイル専用調整——は別記事にまとめる予定だ。詳細はGhostで游ゴシック・ヒラギノを美しく出すCSS設定で扱う。
セルフホスト環境で運用している人なら、テーマファイル自体を編集して根本から直すという選択もある。だが最初の改善は Code Injection で十分だ。サイトが壊れた時の戻し方も簡単(コードを削除するだけ)で、テーマのアップデートにも影響しない。
今後の展望——和文最適化テーマは増えるのか
増えると僕は見ている。理由は3つある。
1. noteやSubstackに疲れた書き手のGhost移住が増えつつある
手数料・カスタマイズ制約への不満から、自分のドメインで運営したい書き手が増えている。その需要に日本語テーマの供給が追いつけば、ジャンルとして成立しうる。
2. 日本語Webフォントの軽量化が進んでいる
Google FontsのNoto Sans JPが動的サブセット配信に対応し、昔より軽く読み込める。Zen Kaku Gothic Antiqueなどの商用フリーの日本語フォントも増え、テーマに組み込みやすくなった。
3. Ghost本体のLexicalエディタと日本語の相性が意外と良い
Lexicalは見出しや引用のHTMLを素直に出力するため、日本語の段落も自然に流れる。テーマ側のCSSさえ整えば「書いて、整う」体験が成立しやすい。
2026年後半〜2027年にかけて、日本語向けのGhostテーマが複数選べる状況に近づいていくと僕は予想している。
まとめ
Ghostで日本語サイトを運営する場合、2026年4月時点での選択肢は以下の3つだ。
- デフォルトCasperを使い、Code InjectionでCSSを補正する(最小コスト)
- 海外テーマを購入し、同じくCSS補正する(デザインの自由度は上がる)
- テーマを自作・改造する(時間はかかるが究極の自由度)
初心者が最初に触るべきは1のデフォルトCasper+Code Injectionだ。まず本記事で示した6条件のうち「フォント・行間・約物」の3つを改善するだけで、日本語サイトとしての見栄えが大きく変わる。
Ghostそのものの成り立ちや始め方についてはGhost(Pro)とは何かを日本語で解説した記事にまとめている。和文フォントの具体的なCSS設定はGhostで游ゴシック・ヒラギノを美しく出すCSS設定を参照してほしい。
情報は執筆時点(2026年4月)のGhost 6系と公式マーケットプレイスの公開状況に基づく。テーマエコシステムは今後変化するため、最新状況は marketplace.ghost.org を確認すること。