Substack vs note vs Ghost——日本人が選ぶ基準を5メディア運用者が比較
Substack
「書く場所」を決めるのに、半年悩んでいる人がいる。
note・Substack・Ghost——どれも一度は名前を聞いたことがある3つのプラットフォームだ。比較記事はネットに無数にある。ただ、そのほとんどが実際に使ったことのない人が書いている、スペック並列型の記事だ。機能を横に並べて終わる。
僕は5つのメディアを並行運用している。noteも過去に使っていた。Substackは海外読者向けに試した。Ghostは現在の主戦場だ。そこから見える「どのフェーズで・誰が・何を選ぶべきか」を、今日は全部出す。
結論を先に置く。正解は1つではない。ただし、自分がどのフェーズにいて何を優先するかさえ決まれば、迷う時間は10分で終わる。
3サービスの成り立ち——どこから来て、誰のために設計されたか
比較の前に、それぞれが何者かを整理する。「設計思想」がわかると、機能の違いの意味が立体的に見えてくる。
note(2014年〜/note株式会社・東京)
日本発・日本語ネイティブの投稿プラットフォーム。元々は「クリエイターが文章・写真・音声・動画を売れる場所」として設計された。プラットフォーム内の回遊(タイムライン・おすすめ・コンテスト)が強く、SNSとブログの中間に位置する。日本語の書き手にとって最も摩擦の少ない入口だ。
Substack(2017年〜/Substack Inc.・米サンフランシスコ)
ジャーナリストが既存メディアを離れて自分のニュースレターを出すために生まれた。「メール配信+有料サブスク」が軸で、ブログ機能は後付けに近い。英語圏では個人メディア革命の象徴になり、著名ジャーナリストが次々と独立した。UIは英語のみで、日本語化の予定は今のところない。
Ghost(2013年〜/Ghost Foundation・英ロンドン/非営利)
元WordPress開発者が「WordPressは重くなりすぎた」と離反して作ったオープンソースCMS。「書くこと・配ること・課金すること」を1つのシステムにまとめた、いわば"書き手のためのインフラ"だ。非営利財団が運営しており、広告モデルを持たない。収益は公式ホスティング(Ghost Pro)のみから得ている。
この3つはそもそも違うゴールを目指して作られた。同じ土俵で比べること自体が少し乱暴なのだが、日本のユーザーが実際に迷うのはこの3つなので比較する価値がある。
Ghostの詳細はGhost CMSとは何かを日本語で解説した記事にまとめている。
一覧比較表——7項目で横並び
まず全体像を表で置く。文章で読むより早い。
| 項目 | note | Substack | Ghost (Pro) |
|---|---|---|---|
| プラットフォーム手数料 | 10〜20% | 10% | 0% |
| 決済手数料 | 約5% | Stripe約2.9%+30¢ | Stripe約3.6% |
| 月額費用 | 無料(プレミアム¥500/月) | 無料 | $9〜/月 |
| 独自ドメイン | プレミアムで可 | 別途Substack設定+$50(買い切り) | 標準搭載 |
| カスタマイズ | ほぼ不可 | 限定的(色・ロゴ程度) | テーマ・HTML・CSS自由 |
| SEO | 普通〜良(ドメインパワー) | 弱い(個人ドメイン扱い) | 強い(静的配信・高速) |
| ニュースレター機能 | 限定的(定期購読) | 中核機能 | 中核機能 |
| 日本語UI | 完全対応 | 非対応(英語のみ) | 非対応(英語のみ) |
| 日本円表示・決済 | 対応 | 非対応(USD) | Stripe経由でJPY可 |
| エクスポート | テキストのみ・画像は手動 | CSV・画像別URL | 全データJSONで完全取得可 |
| サイト主権 | プラットフォーム側 | プラットフォーム側 | 自分側 |
この表を見ただけで、ある程度の答えは出ているはずだ。ただし、数字の裏にあるニュアンスを読まずに選ぶと後悔する。以下、3つの軸で深掘りする。
深堀り①手数料——売上¥100,000で実際いくら残るか
最もわかりやすいのが手数料だ。ただし「10%」と「20%」は単純な倍ではない。実質手取りで計算すると差がもっと見える。
前提: 有料コンテンツで月¥100,000の売上。決済はクレカのみ。為替は1ドル=¥150で計算する。
note(定期購読マガジン)
- プラットフォーム手数料: 20%(¥20,000)
- 決済手数料: 約5%(¥5,000)
- 手取り: ¥75,000
Substack(有料サブスク)
- Substack手数料: 10%(¥10,000)
- Stripe手数料: 約2.9%+30¢/件(読者数と単価で変動、仮に約4%): ¥4,000
- ドル建て決済の為替スプレッド・カード会社海外取扱手数料: 読者側に負担が乗る(=解約率に影響)
- 手取り: ¥86,000前後
Ghost (Pro)
- Ghost手数料: 0%
- Stripe手数料: 約3.6%(¥3,600)
- Ghost Pro月額: $9〜$25(仮に$25=¥3,750)
- 手取り: ¥92,650
月¥100,000の売上で、noteとGhostの差は約¥17,000。年換算で¥204,000——これが「手数料10%→0%」の具体的な重みだ。
ただし、Substackの10%は「ゼロから読者を集める段階」ではSubstack内の推薦機能(Recommendations)経由で読者が増えるので、初期段階では回収できる価値がある。Ghostは集客力を自前で用意する必要がある——手数料ゼロの代わりに、SEOとSNSで読者を連れてくる負担が自分に乗る。
noteの手数料の内訳はnoteの手数料を全部計算した記事で詳細に出しているので、気になる人はそちらへ。
深堀り②ニュースレター配信——「届く」の意味が違う
ニュースレター機能は3社とも「ある」と書けるが、中身はまるで違う。
note の定期購読マガジン
月額サブスクの形で提供される。読者には通知とメールで配信されるが、本質はnote内のタイムラインで読まれることを前提とした設計だ。メール開封率・クリック率の詳細な分析ダッシュボードはない。「noteのサイトを開いてもらう導線の一部」としてメールがある——この順番が重要だ。
Substack のニュースレター
これがSubstackの本体だ。記事を書いた瞬間にメール配信される。開封率・クリック率・解約率が詳細に見える。サブスク購読者の獲得フローが洗練されていて、無料読者から有料へのコンバージョン率も追跡できる。業界標準と言っていい。
ただし、日本の読者がSubstackから届くメールは英語UIの通知設定画面を経由しているので、見慣れない読者は迷惑メール扱いにしがちだ。Gmail・iCloud・キャリアメール(docomo・au・softbank)でのデリバリー安定性は、日本では保証しにくい。
Ghost のメンバー・ニュースレター
Substackと思想は同じだ。記事を書いた瞬間にメンバーにメール配信される。有料・無料メンバーの管理、開封率・クリック率の分析、複数ニュースレターの設定——全部ある。配信はMailgunなどSMTPプロバイダ経由で、デリバリー率は非常に高い。
差分は「Substackが読者獲得のコミュニティを持っている」点だ。Ghostにはそれがない。読者は自分で連れてくる。
Substackの日本語運用の詳細はSubstackを日本語で使う時のポイントにまとめている。
深堀り③長期運用の自由度——5年後に何が残るか
ここが僕が最も重要視するポイントだ。5年後に何が自分の手元に残るかを考えて選ぶと答えが変わる。
note の場合
5年間noteで書き続けたとする。記事は蓄積される。読者もつく。ただし、noteのドメイン上にある。noteが仕様変更をすれば従うしかない。ある日「この機能は廃止します」と言われれば、それまでだ。URLはnote.com/username/n/xxxxxで、独自ドメインに持っていくときのSEO引き継ぎは期待できない。
Substack の場合
独自ドメインを設定できる点はnoteより前進だ。ただし、サイト自体はSubstackのインフラ上にある。Substack側のUI・機能変更には従うことになる。過去には「ナチコンテンツをどう扱うか」で騒動があり、プラットフォームポリシーの変更で書き手が影響を受けた前例もある。
Ghost (Pro) の場合
独自ドメインで運営し、データは全部自分で持ち出せる。Ghost Proを使わずに自前のVPSにGhostを立てれば、プラットフォームそのものから独立できる。ここが決定的な差だ。Ghost Proから別ホスティングに移す場合も、JSONエクスポートで全記事・全メンバー・全サブスクが移植できる。
僕の見方を言う。サイトを自分の資産として育てたいならGhost一択だ。noteとSubstackは「場所を借りて書く」構造からは抜けられない。5年続けた後、その差はとてつもなく大きくなる。
「続けた人が勝つ」メディアの原則は、自分のドメインで書き続けた人にしか効かない。借りた土地で豪邸を建てても、地主の気分で追い出される。
タイプ別おすすめ——自分はどれか
ここまでの比較を踏まえて、タイプ別の推奨を置く。
①書き始めの初心者(読者ゼロ・収益化は当面しない)
→ note
理由はシンプルだ。noteのタイムラインとコミュニティが最初の100人の読者を運んでくれる。日本語UI・日本円決済・スマホアプリ——摩擦のなさは圧倒的だ。書くことに慣れるまではnoteで十分。
有料化を考え始めた段階で、手数料と自由度を天秤にかけて移行を検討すればいい。
②有料購読者を獲得するのが目的(100人→1,000人を目指す)
→ Substack(英語圏読者含む)/Ghost(日本語読者中心)
Substackは英語圏の相互推薦コミュニティで読者が増える仕組みがある。日本語コンテンツでも英語の要約を添えれば海外読者は拾える。一方、日本語読者中心ならGhostのほうが決済・表示の摩擦がない。
手数料の差は先に見た通り。Substackの10%を払うか、Ghostで月$9〜$25を払うか——計算すると、月¥10,000以上の収益ラインを超えた時点でGhostの方が安い。
③日本語コミュニティでの発見性を重視
→ note
これはもうnote以外の選択肢がない。SubstackもGhostも日本語ユーザーの回遊コミュニティを持っていない。「日本語で読まれたい」が最優先なら、noteの手数料は"広告費"として受け入れる判断になる。
④技術的自立・長期運用・サイト主権を重視
→ Ghost(セルフホスト)
自前のVPSにGhostを立てる選択。月$9すらかからない(サーバー代月¥1,000〜¥3,000程度)。技術的なセットアップが必要だが、完全に自分のものになる。
このタイプは少数派だが、5年・10年続ける前提なら最も合理的だ。
noteからの移行先の詳細はnoteからの引越し先5選で目的別に整理している。
切り替えコスト——「移行すべきか」を決める前に
3社間の移行は思ったより重い。
note → Ghost
- 記事エクスポート: noteの標準機能ではテキストのみ。画像は手動で取り出す
- 読者移行: noteの有料購読者の自動移行はできない。個別に告知してGhostで再登録してもらう
- SEO: noteのURLパワーは引き継げない。Ghost側でSEOを1から積み上げる
- 所要時間: 記事100本なら週末2〜3日(画像処理込み)
Substack → Ghost
- これは相性がいい。Substackは全記事・全メンバーをエクスポートでき、Ghostはその形式をインポートできる
- 有料購読者のStripeサブスクも引き継ぎ可能(Ghost公式に手順あり)
- 実移行時間: 記事50本・購読者100人で1日〜2日
note → Substack
- 個人的には推奨しない。手数料は若干下がるが、日本語UIの不在・ドル建て決済・日本読者のデリバリーの不安定さで、総合的には改悪になりやすい
- 海外読者への発信を軸にするなら選択肢になる
切り替えのコストを考えると、最初から長期視点で選ぶほうが結果的に安い。3年後に「やっぱりGhostにすれば良かった」となる人を、僕は何人も見てきた。
まとめ——業界への本音
この業界の比較記事の9割は、スペック表を並べて「用途に応じて選びましょう」で終わる。読者には何も残らない。
僕が書きたかったのはその逆だ。5年後・10年後にあなたの手元に何が残るか——この視点で選んでほしい。
- noteは「場所を借りて日本語コミュニティの中で書く」プラットフォーム。入口としては最適、長期の資産化には向かない
- Substackは「英語圏のニュースレター革命に参加する」プラットフォーム。日本語だけで書くには非効率
- Ghostは「自分のインフラで書き続ける」選択。立ち上げ初期は読者獲得に労力がかかるが、積み上がった先に自分の土地が残る
「どれが一番儲かるか」を聞かれたら、答えは「どれでもない。続けた人が儲かる」になる。3ヶ月で辞めるなら3つとも同じだ。5年続ける前提で考えるなら、その5年を自分の土地で過ごすか借地で過ごすかの差は、とんでもなく大きい。
Ghost Proの具体的な料金プランと比較はGhost Pro料金の全パターンを日本語で整理した記事にまとめている。金額シミュレーションまで踏み込んで決めたい人はそちらもあわせて読んでほしい。
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