Substackを日本語で使う手引き——UI英語・決済・税金の落とし穴
Substack
「noteの代わりにSubstackを使いたい」——そう聞くことが最近増えた。
アメリカ発のニュースレター・プラットフォームで、海外では個人メディア運営者が次々と移ってきている。日本でもテック界隈やスタートアップ周辺で名前を聞くようになった。ところが、いざ日本から使い始めようとすると、多くの人が同じ壁で止まる。
僕自身、ブログとニュースレターを5つ運用している中でSubstackも触ってきたので、今日はその壁の中身を3つに絞って書く。UIの英語・決済・税金だ。この3つを先に理解しておくと、Substackを始めるかどうかの判断が早い。
Substackとは何か——「メール×有料購読」に全振りしたプラットフォーム
Substackは2017年にアメリカで始まった、ニュースレター特化のプラットフォームだ。書き手がメールで記事を配信し、読者はメールで受け取る——この体験を主軸に設計されている。
noteが「記事を投稿するSNS」なら、Substackは「ニュースレターを配信するツール」という立ち位置だ。ブラウザで読む記事ページも持っているが、主戦場はあくまでメール受信箱になる。
料金構造はシンプルだ。
- 無料で開設できる
- 有料購読(paid subscription)を始めた場合、売上の10%がSubstackの手数料
- さらにStripeの決済手数料が別途かかる(通常2.9%+30¢ / 通貨・国により変動)
noteと比較すると、単体の手数料率は有料記事(10%)と近いが、Substackの10%は定期購読にかかる点が大きく違う。noteの定期購読マガジンは20%——Substackの方が半分だ。
この手数料差に惹かれて日本から使い始める人が多い。ただし、それ以上に面倒なのが運用面の3つの壁だ。
壁1: UIがすべて英語——日本語化はされない
まず最初にぶつかるのがこれだ。Substackの管理画面(ダッシュボード)もエディタも設定画面も、すべて英語で統一されている。
2026年4月時点、Substackには日本語ローカライズが存在しない。アプリ・Webどちらも英語UIのみだ。将来的に日本語対応される可能性はあるが、英語圏のユーザーが圧倒的多数を占めるプラットフォームの性質上、優先度は低いと見ている。
ここで詰まる人の典型パターン
- 「Publish」「Schedule」「Draft」など基本語彙で止まる
- 「Subscription tier」「Founding member」など課金系の専門用語で止まる
- 「Payout settings」「Stripe Connect」など決済系用語で止まる
- アカウント削除・退会手続きの導線が見つけられない
慣れれば問題ないが、最初の数時間は検索と画面翻訳の行き来になる。
対処法1: Chromeの翻訳機能をフル活用する
Google ChromeでSubstackの管理画面を開き、右クリック→「日本語に翻訳」を選ぶ。ほぼ全画面が日本語表示に切り替わる。
ただし翻訳精度は機械翻訳レベルなので、「Publish」が「公開」と出るか「出版」と出るかは文脈次第だ。英語の原語も並べて覚えながら進めるのが結局一番早い。
対処法2: ブラウザ設定で自動翻訳
Chromeの設定→「言語」→「substack.com を開いたら自動的に翻訳」をオンにする。毎回右クリックする手間が省ける。
対処法3: Substackアプリは英語のまま使う
スマホのSubstackアプリには自動翻訳機能がない。管理はWeb側で行い、アプリは読者向けの確認用と割り切る方がストレスが少ない。
僕の感覚で言うと、UIの英語は慣れの問題で1週間で気にならなくなる。ただし、次の2つの壁はそうはいかない。
壁2: 決済——Stripeアカウントと「日本円課金の実態」
Substackの有料購読を始めるには、Stripeアカウントの接続が必須だ。SubstackはStripeのアカウント連携を通じて決済処理を行っている。
Stripeは日本在住者でも開設できる
StripeはJP法人および個人事業主向けにサービスを提供しており、日本居住者でもアカウントを開設できる。事業内容・本人確認書類・銀行口座を登録すれば、通常数日でアクティベートされる。
Substack側の設定から「Connect with Stripe」を選ぶと、Stripeのサインアップ画面に飛ぶ。既存のStripeアカウントがあればそれをそのまま接続できる。
ここまでは他のプラットフォーム(Ghost含む)と基本的に同じ流れだ。問題は「何通貨で課金するか」にある。
通貨設定——USDがデフォルト、JPYも選べる
Substackの購読料金はデフォルトでUSD(米ドル)建てで設定される。月額$5、年額$50といった具合だ。
2026年時点、Substackは有料購読の通貨にJPYを含む複数通貨を選べる。購読ページで「¥500/month」「¥5,000/year」のように日本円建てで料金を提示できる。
ただし、日本円建てにしたところで全ての問題が解決するわけではない。
日本の読者が有料購読で詰まるポイント
- クレジットカードの一部拒否: 海外決済扱いとなり、カード会社のセキュリティ判定で決済が弾かれるケースがある(特にデビットカードやVプリカ)。
- 3Dセキュア認証: 本人認証が必須の場合、操作に慣れていない読者が離脱する。
- 明細上の表示: カード明細に「Substack」の英文表記が出るため、家計簿アプリや家族共有カードで違和感を持たれることがある。
- 返金対応は英語: 返金・キャンセル対応のやりとりはSubstackサポート経由で英語ベースになる。
Stripe自体は日本円決済に対応しているが、読者側のカード会社が「海外事業者からの請求」と判定する場合があり、これは書き手側では制御できない。
noteやGhost Proで国内Stripe接続を使うのと比べると、決済成功率でわずかに不利になる可能性がある——というのが実運用での肌感覚だ。
振込(Payout)はStripeから日本の銀行口座へ
売上はStripeに溜まり、そこから登録した日本の銀行口座へ振り込まれる。スケジュールはStripe側で設定可能だ(デフォルトは7日後の自動振込)。
USDで集金した場合、Stripeが円転してJPYで振り込むか、USD建てで保持するか選べる。USD建てで保持する場合はStripeのUSD口座機能が必要になる。このあたりは事業規模と為替リスクの許容度で判断する領域だ。
GhostでStripeを接続する手順もSubstackとほぼ同じ構造なので、並行して知っておくと理解が速い。
壁3: 税金——海外プラットフォーム経由収入の確定申告
ここが一番見落とされている領域だ。日本語の解説記事も少ない。
Substackで有料購読を始めると、収入は以下のルートで発生する。
読者 → Stripe(米国本社) → Substack(米国) → あなたのStripeアカウント → 日本の銀行口座
この流れの中で、日本の居住者にとっての税務上の扱いが論点になる。
収入の区分
日本の居住者がSubstack経由で得た収入は、原則として事業所得または雑所得として確定申告の対象になる。これは国内プラットフォーム(note等)で得た収入と本質的には同じだ。
- 事業として継続的・反復的に行っている場合→事業所得
- 本業の傍らで年間雑所得として受け取る場合→雑所得
- 年間の所得合計20万円以下で給与所得者→確定申告不要の規定に該当する場合あり(住民税は別)
源泉徴収の扱い
noteの場合は国内源泉徴収ルールで処理される。Substackの場合、Substack社は米国法人であり、日本の源泉徴収制度に基づく税金の天引きは行われない。
つまり、手数料を差し引いた全額が入金されるが、そこから日本での納税は自分で行う必要がある。国内サービス以上に「入金額=自分の所得」という感覚で使うと、確定申告時に焦ることになる。
消費税
個人事業主として売上を受け取る場合、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になる。インボイス制度(適格請求書等保存方式)の影響も含めて、一定規模になったら税理士に相談することを推奨する。
外国税額控除・W-8BENの論点
米国プラットフォームから収入を得る場合、理屈上は「米国源泉所得」と扱われる可能性があり、米国側で30%の源泉徴収(バックアップウィズホールディング)がかかるケースがある。これを避けるためSubstackの設定画面で税務情報フォーム(W-8BEN相当)の提出を求められることがある。
2026年4月時点の実態として、日本居住者が適切にフォームを提出していれば米国での源泉徴収は基本的に発生しない。ただし、Substack側の仕様変更で対応が変わる可能性があるため、有料購読を始める段階で税理士または国税庁のタックスアンサーで最新情報を確認するのが堅い。
何より重要なのは記録を残すこと
- Substackの売上明細(月次)
- Stripeの取引履歴(CSVダウンロード可)
- 振込実績と為替レート
- 発生した経費(サブスク費・ツール代)
これらを毎月整理しておけば、確定申告は慌てずに済む。「全額入金されるから自由に使っていい」と誤解すると、翌年3月に税金分の資金が手元にない事態になる。
Substackのメリット——発見機能・Notes・Ghostにない強み
壁の話ばかり書いたが、それでもSubstackを選ぶ人には理由がある。僕がいいと思う点を3つ書く。
発見機能(Discovery)が強い
Substackには「Explore」「Leaderboard」「Recommendations」といったサイト内発見の仕組みがある。特にRecommendationsは他のSubstack運営者が「このニュースレターもおすすめ」と紹介し合う機能で、ここから相互送客が自然発生する。
noteのおすすめ欄に近い機能だが、Substackは書き手同士の横のつながりが活発だ。英語圏では個人メディア同士でフォロワーが行き来するエコシステムができている。日本語圏ではまだ薄いが、早い段階で参入しておく価値はある。
Notesという短文投稿機能
Substackには「Notes」というTwitterライクな短文投稿機能がある。購読者への近況報告や、他の書き手との対話に使える。メインのニュースレター配信とは別に、軽い接点を作れる。
Ghostには現時点でこれに相当する機能はない。SNS的な交流を望むなら、Substackは有利だ。
スマホアプリの完成度
SubstackのiOS/Androidアプリは、読者にとっての体験が非常によくできている。購読したニュースレターが一覧で並び、メールより読みやすいレイアウトで提供される。プッシュ通知も効く。
この「アプリで読んでもらえる環境」を書き手側のコストゼロで手に入れられるのは、Substackの独自の強みだ。
合う人・合わない人——僕の見立て
合う人
- 英語UIに抵抗がない、または翻訳機能で十分と割り切れる人
- 海外の読者も視野に入れている、英語または多言語で書く人
- ニュースレター=メール配信を主戦場にしたい人
- 他のSubstack運営者との横のつながりを重視する人
- 低コストで有料購読を始めたい人(手数料10%+Stripe料)
合わない人
- 日本語UIでないと管理が不安な人
- 読者に日本の決済環境でストレスを与えたくない人
- 確定申告・税務処理を自分でやりたくない・税理士を使う予算もない人
- テーマ・デザインを細かくカスタマイズしたい人
- 独自ドメイン運用と完全な自分の所有権を重視する人(Substackでもカスタムドメインは可能だが、ホストはSubstack側)
「Substackを使えばアメリカの成功者みたいに稼げる」と期待している人がいる。これははっきり書く。プラットフォームは道具だ。Substackに移っただけで読者が増えるわけではない。noteで読者ゼロだった人がSubstackで読者が増えることは、まずない。書く量・書く質・続ける年数——これはどのプラットフォームでも変わらない。
始める前に比較しておくべきこと
Substackは魅力的だが、日本市場で使う上では不利な点もある。noteやGhostと並べて、自分の状況で最適なものを選ぶ方がいい。
比較の軸は以下のようになる。
- 日本語UIの必要性: 必要ならnoteかGhost Pro(日本語テーマ)
- 手数料: サブスク型で最安はGhost(Stripe手数料のみ)、次にSubstack(10%+Stripe)、noteは20%+決済
- 読者の国籍: 海外が含まれるならSubstack、日本のみならnote/Ghost
- デザイン自由度: 高いのはGhost、低いのはSubstack/note
- 税務の手間: 国内プラットフォームが楽、海外プラットフォームは自分の管理負担が増える
詳細な比較はSubstack vs note vs Ghost 徹底比較で表にまとめている。あわせてnoteの手数料の実額とnoteからの移行先5選も参考にしてほしい。
まとめ——道具の選択より、続けるかどうかの方が重い
Substackは優れたプラットフォームだ。手数料は良心的で、発見機能も強く、アプリ体験もいい。日本人でも使える。
ただし、UIの英語・決済の摩擦・税務の自己管理——この3つの壁は、始める前に知っておかないと後から必ず時間を取られる。特に税務は「後で考えればいい」では済まない領域だ。年末に慌てて取引履歴を漁ることになる。
もう一つ、本音で書いておきたい。
「海外プラットフォームの方がかっこいい」という理由でSubstackを選ぶ人がいる。それは自由だが、続かなかったら意味がない。noteでもGhostでもSubstackでも、書き続けた人にしか読者は付かない。3ヶ月で辞める人が9割のこの世界では、プラットフォームの選択より「どれでもいいから1年続ける」ことの方が100倍重い。
僕は5つのメディアを運用していて、どれも最初の半年はPVが見えない時期を通った。Substackでも同じだ。発見機能がいくら強くても、記事が薄ければ誰も読まない。
道具を選ぶのに1週間使うより、記事を書くのに1週間使う方が先だ。そのうえでSubstackが自分に合うと判断したなら、今日書いた3つの壁を織り込んで進めばいい。
手数料・仕様は執筆時点(2026年4月)のSubstack公式ヘルプおよびStripe日本公式ドキュメントを元にした。税務関連は一般論であり、個別の確定申告については税理士または国税庁タックスアンサーで最新情報を確認すること。両サービスの機能は予告なく変更される。